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高速道路の深夜割引は、
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「0〜4時に少しでも走れば全区間3割引」という現在の制度と、
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「22〜5時に走った距離だけを割り引く」将来の新制度(見直し案)
が公式に並立して説明されており、時期・仕組みが混同されがちです。国土交通省 +1
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さらに、「フリーフローETCアンテナで途中の位置と時刻を取得し、距離連動で割引する」という将来像も出てきており、
「今どうなっていて、将来どう変わるのか」が非常に分かりづらい状態です。NEXCO 東日本 -
本記事では、公式一次情報だけを使って
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旧来の0〜4時制度(=現行制度)
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見直し後の22〜5時・距離連動型制度(まだ未導入)
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フリーフローETCアンテナと途中位置取得
を整理し、あわせてご質問のケースA/Bがどう扱われるかを検証します。
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目次
① 旧制度(=現行制度)0:00〜4:00 深夜割引の正確な仕様
ここでいう「旧制度」は、NEXCO・国交省が「現行の割引」と呼んでいる0〜4時に少しでも高速道路を走れば全区間3割引の制度です。
(2025年12月現在、この制度がまだ実際に運用中です)
割引時間帯
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対象時間帯:0時〜4時NEXCO 東日本+1
割引方法(全区間か距離按分か)
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国交省・大臣会見要旨
「0時から4時の間に少しでも高速道路を走行すれば、料金の全額が割引の対象になる」国土交通省
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NEXCO西日本(「現行」欄)
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「入口から出口までの全走行の料金に対して約30%を割引します。」ウエスト日本高速道路株式会社
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▶ 結論
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0〜4時制度では、距離按分は一切行わず、
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条件を満たした走行については
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入口〜出口の全区間の料金が約3割引になります。
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「時間要件」の判定ロジック(入口・出口だけか?)
NEXCO西日本のFAQが、時間要件をかなりはっきり書いています。
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Q:「0〜4時に入口と出口の両方を通過しないとダメか?」に対し、次のどれかでOK:
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0〜4時に入口料金所を通過
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0〜4時に出口料金所を通過
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0時前に入口を通過し、4時以降に出口を通過
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例:入口22時、出口翌6時の場合でも、
「0〜4時の時間を含んで走行していただいてますので要件は満たします」
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また、NEXCO西日本の「ETC割引ご利用時のご注意」にて:ウエスト日本高速道路株式会社
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深夜割引などの時間帯割引の適用は
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料金所またはETCフリーフローアンテナの通過時間で判定
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一部路線では
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入口・出口のETCフリーフローアンテナの通過時刻で割引判定を行う、と明記
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▶ 結論(旧制度/現行制度の時間判定)
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時間帯の判定に使うデータは、
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入口・出口料金所、または(料金所の代わりの)ETCフリーフローアンテナの通過時刻のみ。
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SA・PAでの休憩時間や、区間途中の「正確な位置・時刻」は、
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公式資料上、判定ロジックに用いている記述はありません。
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(途中の走行位置データを用いて割引距離を計算する仕組みは、旧制度には存在しない)
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② 見直し後の制度(22:00〜翌5:00)の正確な仕様
※2025年12月時点ではまだ運用開始前
ここからは、国交省・NEXCOが「見直し後の深夜割引」と呼んでいる22〜5時・距離連動型の制度です。
制度の骨格(国交省の発表)
国交省の「高速道路の深夜割引の見直しについて」より:国土交通省 +1
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見直し内容(要点)
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深夜割引適用時間帯に走行した分のみ3割引
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深夜割引適用時間帯を22時〜翌5時に拡大
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あわせて400km超の長距離逓減制を拡充
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見直し後導入までの間は、現行の深夜割引(0〜4時・全区間3割引)を継続
NEXCO3社による具体的な新制度案
NEXCO3社の2024年7月12日付資料「高速道路の深夜割引の見直しについて」より:NEXCO 東日本+1
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<現行の割引>
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「0時から4時の間に高速道路を通行するETC車の料金を3割引」
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「0〜4時に少しでも走行すれば3割引」
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<見直しのポイント>
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割引適用時間帯を22時〜翌5時に拡大
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割引適用時間帯に走行した分のみ3割引
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400km超の長距離逓減制を拡充
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割引計算方法(概要)
実施時期とステータス
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2023年1月20日 国交省・NEXCO発表
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「令和6年度中を目処に深夜割引を見直すこととします」国土交通省
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2024年7月12日 NEXCO3社
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「令和6年度末頃に運用を開始する予定」NEXCO西日本+1
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2024年12月25日 NEXCO3社
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システム整備の遅れにより、運用開始を令和7年7月頃に延期NEXCO西日本+1
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2025年10月29日 NEXCO東日本
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ETCシステム障害の影響等から、
「令和7年7月頃からの運用開始は困難」
「深夜割引見直しの運用開始時期は、令和8年度以降となります」と公表。NEXCO 東日本+1
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▶ 結論(2025年12月時点)
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22〜5時・距離連動の新制度は
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制度内容・計算方法・アンテナ利用方法は公式に決定・公表済み
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しかし、運用開始時期は令和8年度以降に延期され、具体的な日付は未公表
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よって、現時点の「現行制度」は依然として0〜4時・全区間3割引です。
③ 「新制度(距離連動型)」は何をどう変えるのか?
距離連動方式になるのか?
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NEXCO3社資料にて
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「割引適用時間帯の走行分のみ3割引」
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入口・出口・本線アンテナの通信記録から
割引適用時間帯の走行距離および全走行距離を算出、と明記。NEXCO 東日本
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▶ 公式に「距離連動型」であることが明言されています。
フリーフローETCアンテナ等を使うのか?
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同じ資料にて
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「高速道路上にETC無線通信専用アンテナを設置」
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その「通信記録(時刻・位置)」を用いて距離算出、と明記。NEXCO 東日本
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▶ 深夜割引の距離算定に、本線上のETC無線通信専用アンテナ(フリーフロー型アンテナ)を使用すると公式に書かれています。
実施確定なのか、検討段階なのか?
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国交省は
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「令和6年度中を目処に深夜割引を見直すこととします」とし、見直し内容(22〜5時・距離連動)を公表。国土交通省
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NEXCO3社は
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同じ内容に基づき、「令和6年度末頃」「令和7年7月頃」と運用開始予定を再三公表。NEXCO西日本+1
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2025年10月時点では
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「深夜割引見直しの運用開始時期については、令和8年度以降となります」と発表。NEXCO 東日本+1
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▶ 結論
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制度内容自体は「導入する方針が確定」している。
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ただし、**運用開始時期は未定(令和8年度以降)**であり、現段階では「準備中」。
④ フリーフローETCアンテナの公式説明と「途中位置取得」への言及
そもそもフリーフローETCアンテナとは
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NEXCO西日本「ETC割引をご利用いただく際のご注意」:ウエスト日本高速道路株式会社
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一部路線では、料金所のほか「入口・出口等のETCフリーフローアンテナで通信を行い、走行区間を判別」と明記。
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NEXCO中日本の案内では、名二環などで
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「ETC時間帯割引は、入口料金所または出口のETCフリーフローアンテナ等の通過時刻で割引の適否を判断」と記載。
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▶ 現行制度では
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フリーフローアンテナは
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「料金所の代わりに入口/出口としての通過時刻・通過位置を取得」し、
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走行区間・時間帯割引の判定に用いられています。
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ただし、0〜4時制度に関しては
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「途中の連続した位置情報・時刻を取って距離連動の割引に使う」という記載は公式資料上は存在しません(不明)。
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深夜割引「距離算定」に使うと明記されたか?
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NEXCO3社の見直し資料・西日本の「深夜割引(変更後)」ページでは、NEXCO 東日本+1
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「入口料金所、出口料金所及び本線上に設置したETCフリーフローアンテナ等の通信記録(時刻・位置)から、
**深夜割引適用時間帯の走行距離および総走行距離を算出します。」と明記。
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▶ 結論
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将来の22〜5時・距離連動型深夜割引では、
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フリーフローETCアンテナによる途中位置・時刻取得を前提に、割引距離を算出すると公式に書かれています。
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これは「実証実験」ではなく、
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本格運用前提のシステム仕様として公表されています。
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ただし、運用開始時期はシステム障害等の影響で令和8年度以降・具体日未公表。NEXCO 東日本+1
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⑤ ケースA / ケースBは旧制度(0〜4時)でどう判定されるか?
※ここではご提示のケースを、0〜4時制度(現行制度)下の仮想ケースとして整理します。
※割引ロジックは、前述の公式仕様(全区間3割引/時間要件のFAQ)からのみ判断します。
再掲:ケース設定(旧制度を前提とした仮定)
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ケースA
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0:00〜4:00 → 走行
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4:00〜8:00 → SAで休憩
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ケースB
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0:00〜4:00 → SAで休憩
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4:00〜8:00 → 走行
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ここで重要なのは、入口・出口をいつ通過したかです。
公式仕様上、深夜割引の時間要件は以下のいずれかで満たされます。
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0〜4時に入口料金所を通過
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0〜4時に出口料金所を通過
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0時前に入口通過かつ4時以降に出口通過(例:22時IN〜翌6時OUT)
ケースA/Bの「直感」と公式仕様のズレ
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ケースA(0〜4時に走行 → 4〜8時に休憩)
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典型例:
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0時に入口通過 → 2時まで走行 → 2〜4時は走行継続 → 4〜8時SA休憩 → 8時出口通過
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この場合、
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「0〜4時に入口or出口通過」または
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「0時前IN〜4時後OUT」
のいずれかを満たすため、時間要件は確実に充足。
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公式仕様上、入口〜出口の全区間が約3割引となります。
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ケースB(0〜4時に休憩 → 4〜8時に走行)
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旧制度では、
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SAは高速道路内(本線から分岐する休憩施設)であるため、
入口〜出口の間に0〜4時が含まれていれば、時間要件を満たすと解釈されます。-
例:23時入口通過→23〜24時走行→0〜4時SAで休憩→4〜6時走行→6時出口通過
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これはFAQの例示(22時入口→翌6時出口でも要件を満たす)と同じ構造です。
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したがって、公式の時間要件ロジックに従う限り、
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ケースBも時間要件を満たし、入口〜出口の全区間が約3割引となります。
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▶ 結論(旧制度におけるケースA/B)
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公式仕様ベースで整理すると:
| ケース | 0〜4時を含む「入口〜出口」の利用か? | 時間要件 | 割引対象 |
|---|---|---|---|
| A | 含む | 満たす | 全区間3割引 |
| B | 含む前提のケースなら | 満たす | 全区間3割引 |
| B’ | 4時ちょうどに入口→8時出口など、0〜4時を全く含まない場合 | 満たさず | 割引なし |
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ご提示の「A=100%、B=0%」という直感は、
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「0〜4時に実際に走っていた部分だけが割引対象」という距離按分的なイメージによるものですが、
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公式の旧制度はそもそも距離按分をしていないため、
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その前提から導かれる「時間按分の論理矛盾」は、制度設計上は発生しません。
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⑥ 「時間按分方式が抱える論理的欠陥」と、それをどう解決しようとしているか
旧制度(0〜4時・全区間3割引)の構造
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特徴
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0〜4時に少しでも利用していれば全区間3割引という「フラットな割引」。国土交通省 +1
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実際には、0〜4時の利用時間や距離がごくわずかでも、全ルートが割引対象になる。
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課題(公式認識)
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国交省資料・大臣会見で、
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0時ちょうどの料金所通過待ちの車両滞留
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トラック運転者の過度な夜間・深夜集中
が課題として明記されています。国土交通省 +1
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▶ 旧制度は「距離按分の矛盾」を避ける代わりに、
公平性・安全性の面で大きな歪みを生んでいた、と公式に位置づけられていると言えます。
新制度(22〜5時・距離連動型)での技術的解決
新制度は、まさにこの「歪み」を潰すための設計になっています。
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距離連動+時間帯限定
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割引は「22〜5時に走行した距離」に比例して決定。NEXCO 東日本
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0〜4時だけでなく22〜5時すべてを評価することで、
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「0時ジャスト駆け込み」行動のインセンティブを緩和。
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本線フリーフローアンテナによる途中位置・時刻取得
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上限距離(速度超過抑止)と休憩考慮
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利用時間1時間あたり
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大型車等:90km
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それ以外:105km を上限距離として設定。NEXCO 東日本+1
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「22〜5時における高速道路の利用時間(休憩含む)」を定義し、
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最大30分の休憩を加味した上で上限距離を決める仕組み。NEXCO 東日本+1
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▶ まとめ
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旧制度
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「距離按分」をしない代わりに、
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利用時間や走行距離に関わらず一律3割引 → 公平性と安全面に課題。
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新制度(距離連動型)
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本線フリーフローアンテナで途中位置・時刻を取得し、
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時間帯別の走行距離を算出 → 割引率を距離比で決定することで、
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「時間按分の論理矛盾」ではなく、明確な物理的距離ベースのロジックに置き換えようとしています。
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⑦ ドライバーが「今」実務上気をつけるべき点(2025年12月時点)
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現在有効なのは「0〜4時・全区間3割引」の制度
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22〜5時・距離連動型はまだ導入されていません(令和8年度以降開始予定・日時未公表)。NEXCO 東日本+1
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深夜割引の時間要件
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次のいずれかを満たせば適用対象:
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0〜4時に入口料金所を通過
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0〜4時に出口料金所を通過
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0時前に入口通過かつ4時以降に出口通過
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SA・PAでの長時間休憩を挟んでも、
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「入口〜出口の間に0〜4時を含む」走行であれば時間要件は満たす。
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ETCカード・フリーフロー区間の注意
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入口〜出口の間は同じETCカードを挿入し続けること。ウエスト日本高速道路株式会社
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名二環や近畿圏の一部路線では、
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入口・出口のフリーフローアンテナ通過時刻が時間判定に使われる区間があるので、
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NEXCO各社サイトの注意書きを確認しておく。
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⑧ 結論(今どう走るのが制度的に「正解」か)
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2025年12月時点では、
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0〜4時にまたがる走行なら、入口〜出口の料金が全区間3割引というシンプルな現行制度が有効です。国土交通省 +1
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ケースA・ケースBのように、
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高速道路内で0〜4時に走っているか/休憩しているかという違いは、
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旧制度の公式ロジック上は区別されていません。
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将来は、
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フリーフローETCアンテナで途中位置・時刻を取得し、22〜5時に走った距離だけを3割引する方式に移行する方針が、国交省・NEXCOから公式に示されています。NEXCO 東日本+1
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したがって、現時点でドライバーが意識すべきことは:
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今:
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「0〜4時を含むように入口・出口の時刻を組み立てれば、ルート全体が3割引」
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将来(22〜5時・距離連動型導入後):
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「22〜5時にどれだけの距離を走ったかが割引額を決める」
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という仕組みに変わる、ということです。
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公式ソースURL一覧(本記事で参照した主な一次情報)
※いずれも NEXCO各社または国土交通省の公式ページ/PDFです。
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国土交通省
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NEXCO東日本・中日本・西日本
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高速道路の深夜割引の見直しについて(内容詳細・距離連動方式・アンテナ利用)NEXCO 東日本+1
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高速道路の深夜割引見直しの内容について(令和6年度末頃 運用開始予定)NEXCO西日本+1
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深夜割引見直し時期の延期について(2024年12月25日)NEXCO西日本+1
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深夜割引見直しに向けたシステム整備の状況(令和8年度以降へ延期)NEXCO 東日本+1
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NEXCO西日本
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深夜割引(現行制度の案内:0〜4時・全区間約3割引/変更後の22〜5時制度の比較)ウエスト日本高速道路株式会社
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ETC割引をご利用いただく際のご注意(時間判定・フリーフローアンテナの役割)ウエスト日本高速道路株式会社
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よくあるご質問(深夜割引は入口・出口を0〜4時に通過しないとダメか?)
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深夜割引(見直し後)のページ/フリーフローアンテナによる距離算定の記述
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NEXCO中日本
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深夜割引の見直しについて(ETC無線通信専用アンテナの通信記録を用いた割引計算方法)C-NEXCO+1
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ETC割引の時間判定について/名二環等のETCフリーフローアンテナの記述
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